歩行時に脚から下だけが動き、ペタペタと歩くように見える方がいます。
これは腹圧が抜け、腹筋群の弱化とお尻の筋肉(大殿筋)の弱化により起きていることが多いです。
本来は体幹と連動して力が伝達され、協調運動として歩行するはずが、
股関節から下が切り離されて歩いているように見えてしまいます。
これは見た目にも美しくありませんし、必要以上の労力や関節への負荷も大きくなってしまいます。
その原因と考えているのが、
横隔膜、骨盤底筋、腹横筋に囲まれるお腹の中、腹腔の内圧(腹圧)の低下です。
腹腔内圧と腹壁の機能としては、
・脊椎の安定化と脊柱の負荷軽減
・体幹および骨盤の運動
・呼吸運動の補助
・腹部の緊張維持
などが挙げられます。
横隔膜と骨盤底筋、腹壁の筋群の協調的な動きは、腹腔内圧を上昇させることができるので、これにより体幹は安定し、脊柱やとくに腰椎域の負荷が軽減されます。
椎間板の負荷の軽減も、
上部腰椎の椎間板にかかる圧力を50%、下部腰椎では30%ほどまで軽減することができ、脊柱の疾患の予防にもとっても重要となってきます。
重たいものを持ち上げる時に、グッといきむような行動は自動的に腹圧を高めて対応している動きといえます。
コアや体幹を整えることは重心を安定させます。
深部知覚や固有知覚などが整い、自分で身体の位置異常やズレ、違和感を認識しやすくなることにもつながります。
デスクワークなどが多い方は、座る時間が長かったり股関節が曲がったままの状態で動かないことで、股関節から、骨盤と腰椎までに付着する「腸腰筋」という筋肉が硬くなってしまいます。
座っていることが多いと、腰への負担と、腹圧が抜けやすく、腹筋群とお尻の筋が弱化しやすい状態にもなっていきます。
例えばですが
体の前側の筋肉と、後ろの筋肉は、1:1のバランスで、張力バランスが取れている状態といえます。
座ってる状態では前側の「腸腰筋」が短縮しています。
腸腰筋が1から0.7に短縮すると、後ろの筋肉は1.3に伸ばされるわけです。
後ろの筋肉は股関節を後方に持ってくるお尻の筋肉「大殿筋群」です。
この前側が短縮した0.7の状態で立ち上がると、
股関節が曲がって伸びきらない「くの字」の状態では、真っ直ぐには立てないので、
どこかで「逆 くの字」が必要になります。
これが反り腰のように下部の腰椎でおこり「逆 くの字」を起こし代償します。
腰の後ろ側の起立筋が0.7と、お腹周りの腹筋が1.3が起きてきます。
お尻の後ろ側の殿筋群1.3と、前側の腸腰筋が0.7と交差するようになるわけです。
これを「下位交差症候群」といいます。
1.3に伸びてしまった側は、伸びきってしまったゴムのように力がうまく伝達されません。
つまりうまく使えずに弱くなっていく、弱化の一途をたどっていくわけです。
ちなみに上位交差もありますが、長くなるので今回は割愛します。
腹腔内圧が下がると体幹が安定しないため、神経系の伝達もスムーズとはいえなくなります。
例えば歩いている時に、腹圧を高めて歩くようにしてみると、
お尻の筋肉(大殿筋)に力が入り、足を後ろに持って行きやすなると思います。
それによって対側の足が前に自然と出しやすくなります。
これは踵を地面に着いた床反力の作用が、大殿筋の筋収縮へとスムーズに伝わり、
股関節を後方へと持っていく推進力が増したためと考えられます。
この出しやすくなるという感覚は重要で、
出しにくいということはそれだけ余分な労力を使い歩いているということになります。
ですが腹圧を機能させるということは、常に圧がかかっていたり、硬かったりする状態ではなく、動きに合わせて圧を上げたり、下げたり調節できることが適切な機能です。
同じように体幹機能もニュートラルな状態から、状況に応じていつでも硬くしたり、柔らかくしたりできることが望ましいわけです。
そのために腹圧を高めるという一つの方法も知っておいてほしいと思っています。
ここで簡単に腹圧の上げ方をご紹介したいと思います。
◎やり方として、
お腹の内側から押し返すように力を入れます。
お腹に大きいボールがありその空気圧で内側から押し返すように意識するといいです。
お腹側だけでなく、背中側にも同じ力で押し返し、前と後ろと、上と下へ全体を押し返すように行います。
お腹の全体でできると良いですが、気持ちが悪くなる方や、血圧が高めの方、逆流性食道炎の方などは、
下腹部だけでも効果はあります。
下腹部ですと下丹田のあたりから、前と後ろ左右と同じ力で大きいボールが押し返すようにします。
この内側から押し返す圧力を保ったまま呼吸し、息を吐く時のも腹圧を抜かないようにします。
最初は難しいのですが、腹部の圧力は保ったまま肺から息を出すようにするとやりやすいです。
これを日に5回くらいおこないます。
これは呼吸時に働く横隔膜の柔軟性にも役立ちます。
腹圧や体幹が整ってくると、歩行時に脚が、体幹から連動してスムーズに出せてスーと前に進んでいると感じることがあるかもしれません。
それは体への負荷も少なく、見た目にも綺麗な歩き方になっている証拠かもしれません。
オステオパシーでは動作などの動きの確認も行い、短縮している部位の特定、反対に弱くなり働けていない部位の特定、それぞれ対して必要なアプローチを行っていきます。
また対応できる幅が広く、脳や脊髄をおおう硬膜や頭蓋骨、筋膜や関節、内臓、リンパなどへ原因の特定に対してアプローチできる幅が広いのも特徴的です。